背 景
お世話になった人達にお礼を伝え始めました。
なぜなら、脳・脊髄に無数にある海綿状血管腫が治療不可だと分かったからです。
いつどこの血管腫が大きめの出血を起こすかは誰にも分かりません。
お礼をしたい人の1人がこの記事の主人公。大事な同級生でした。
今その人は創価学会の役員をしています。
私は若い頃の経験から学会にはトラウマ級の打撃を受けており、今も思い出すととても辛い。
その人に会えば勧誘に遭う可能性が高い。
けれど散々悩んだ末、連絡を取ってお礼を伝えようと決めました。
その人自身も重病だということが、名前検索で分かったからです。
聖教新聞社の中の人のお陰で、探していた人の連絡先が分かり、新聞社経由で私の電話番号を伝えてもらいました。連絡待ち状態のところからこの記事は始まります。
突然に電話がかかってきた。ほんとうに突然のことだった。
名前を名乗る声。
この声だ。
少しかすれているけど本人だ。口調も変わってない。
一方、私の声は裏返る。この高い声はどこから出るんだw
しかし、心の片隅は冷静だった。
自分の体調のことも、夫の仕事や個人情報も、絶対にしゃべるんじゃないぞ。
この人は人の懐に飛び込むのが上手い。小学生のころからそうだった。自分のことを話し続けつつ、相手の話もきちんと聞く。
相手が何を話したがってるか、どんなリアクションをすればいいのかがとっさに分かる機転のきく人だ。
きっと今もそうだろう。気をつけないといけない。
それにしても、長く話していても時間を感じさせない人だ。
35年も離れたいた人間だろうかと疑うほどだ。流石だこの子は。いや、電話の向こうにいるのは50過ぎのオッサンや。
そもそも私だって同じ歳のオカンやんか、同級生なんやから。
「今どうしてる?」「あの子はこんなことをしてるらしい」といったやりとりが1時間半くらい続いたろうか。
人を笑わせるのもうまいなあ・・・と感心しつつ、自分のことを話し過ぎないように、私は相変わらず気をつけていた。
この人は役職付きの創価学会員だ。何が勧誘の取っ掛かりになるか分からない。
相手のペースに乗っかるのは快適だけれど、連絡を取ろうと思った目的を忘れてはいけない。
しかし、ふと考えた。
唐突かつストレートに「ありがとう」と伝えたら「いきなり何やw?」というリアクションになる。
さてどうする。
「いつどうなるか分からない病気を持っている」とストレートに伝えたら、まさに勧誘の格好のネタになるだろう。
この人の居所が分かり、直接電話がかかってくるまでの時間が短かったため、当たり障りのない理由を考えておくことができてなかった。
これは困ったな。どう切り出せばいいんだ。
「いやあ、色々懐かしいなあ。あの頃はほんまに楽しかった。色々とありがとうね♪」
さらっと普通に言えばいいか。何も言えないよりずっとマシや。そうやん。簡単なことやんか。
ところが、頭の中が整理できた次の瞬間
「これから出かけるところがあるねん。ごめんやけど」
ときた。
うわ電話が切れてしまう。
急がねば。伝えきってしまわないと探してもらった意味がない。
勧誘の話が出てくるまでに、ありがとうを伝えてさようならにした方がいい。やり取りを引き延ばしちゃダメだ。
焦った私は、一番言っちゃいけないことを口走ってしまった。
「あの、私、私の脳には出血しやすい脳血管奇形がたくさんあって、治療不可で、余命が読めない。だから伝えたいことがある」
「え・・。そうなん?!分かった。そういう重要な話は落ち着いて聞く。待っててな。ごめんな。また連絡するから」
これで電話が切れてしまった。
最悪やん。あかんやん。
話を引き出すのが上手い人がじっくり病気について聞いてくる。あかんやん。むっちゃアカンやつやん。
電話が切れた後、濃いグレーの雲が心の中で湧き始めた。
なんて強烈な墓穴を掘ってしまったんだ私は。
心の中で大雨が降り始めた。
LINEの友達登録をすることになった。電話料金が無料になるからだという。
とにかく電話は次で最後にしたい。それでなくても私は言葉が出づらい。少し大きめの血管腫が言語領域にあるせいだ。
相手の話を聞いて相槌を打つ分にはいいけれど、自分が主導権を取るのは難しい。
次の日、まずは文章のLINEが届いた。今から電話を掛けても構わないか、と書いてある。朝の8時半だ。
私はとてもよく寝る人間で、普段の起床時間は10時を過ぎる。
8時なんてとんでもないわ。起き抜けならなおさらだ。
「今ちょっと手が離されへんねん、ごめん」
・・・手放されへんのは布団なんやけどな、ごめんな。
あかん。これからも電話は止めよう。上手く話せる自信がない。
それからはメールでのやりとりが続くことになる。文章なら安心だ。心に余裕が生まれる。主導権を取れる可能性が高い。
そこでふっと思った。
勧誘を上手くかわして、当時の私がどんな生活環境で生きてたかをお伝えしよう。
そうすれば、私の「ありがとう」の重さが伝わる気がする。
もしあなたと仲良くなってなかったら、私は少年院送りのワルになってたと思う。そんな暮らしをしてたんだよ、あなたに出会う前の私は。
だからあなたを探し続けてた。ありがとうと言いたかった。人の道を踏み外さず幸せに暮らしていると伝えたかった。言葉を忘れてしまうその前に。
ここから先は、創価学会の勧誘をかわしつつ、長年伝えたかったありがとうを言えるまでの記録になる。もちろん、公にしない方がいいことは一切書かない。
でも勧誘に関しては、ある程度しっかり書いてみようと思う。ひょっとすると誰かの役に立つかもしれないから。
登場する「その人」はこの記事に登場する少年です
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